第七位相:迫神日記

迫真怪異叙耳詩について……お話します……

迫真怪異叙耳詩:7.5話補遺

7.5話『迫神合宿』について……お話します……

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【神秘術について】

神秘術は常に、「外から力を借りるもの」である。

神道の神の力を借りる禁厭や、自然信仰に基づき自然の力を用いるウィッチクラフトなど。

人がライターで火を起こすとして、火を発揮しているのは人ではなくライターである。そして人がライターを作る時、それをライターとして機能させるのに必要なのは作る人間ではなく、燃料とフリントである。

しかし人の技術なくば、起こす火はすぐに消え、その筐体はたやすく壊れてしまう。術師の腕前とは己が内から何かを発揮するものではなく、「パーツを組み立てる技術」であり、それを「うまく利用する技術」なのだ。

【学会の部署】

編纂部:焚滅師や霊能者が在籍。主に伝承の関わる怪異存在の対応をするため「編纂」。編纂部は『特事伝承課』『汎伝承課』に分かれており、特事課は人間社会に早急に影響を与えかねない存在の即時対応を、汎課は古い伝承や言い伝え、都市伝説といった広く浅く流布する伝承の編纂と対応にあたる。
特事伝承課頭は東京都知事「一斑 通」、汎伝承課頭は立教の文学部教授「弛孔 戴丁」が担当する。

 

神道部:神職が在籍。旧くより日本に根付く神々や、祈祷によって維持される神秘構造・術式への対応を主とする。神道部直属部隊『大祓』は、祈祷や禁厭に優れた武闘派によって構成される。
神道部頭は『東京四神家』と称される神職名家のひとつ、四ツ宮家の禁厭部門筆頭「四ツ宮 暗斤」が担当。

 

研鑽部:主に学者が在籍。迫神学をはじめとする神秘学や科学全般の研究および術式や呪物の解析開発に携わる。研鑽部頭でありホラー作家の「玲爻院 都」は人前に滅多に姿を現さず、大半は私兵である『雨合羽部隊』を通してのコンタクトのみをとる。

 

管理部:学会内での怪異・呪物の管理、保管、および保護を担当する。学会の回収した呪物や怪異の多くは池袋駅地下の収容施設『パンドラ』に収められ、管理部によって封じ込められる。
管理部頭の「志納 真珠」は、特科神秘部頭の如何 大沙と交際関係にあるとか。

 

資料部:学会資料や伝承保有文献の管理、情報型怪異の対応を行う。伝承や信仰を糧とする怪異と相対するにあたって、資料を読み解くということはただ識る以上の意味を持つ。資料部の蒐集した資料の多くは東京都立中央図書館の秘匿エリアに保存されている。
資料部頭『柑 梓』はミステリー作家でもあり、特に死の描写のリアリティが好評である。

 

特科神秘部:超能力者ㅤㅤㅤすなわち異能力保有のみで構成され、異能者を相手とする学会の「異端」。怪異や呪物といった神秘存在ではなく、異能者ㅤㅤㅤ人間との戦いが主であり、在籍者もそれに応じてかかなりの曲者揃い。
特化神秘部頭『如何 大沙』も何らかの異能力を保有していると思われるが、その内容は不明。

 

経務部:怪異とは直接関与せず、学会という組織の金銭面や事務面を支える裏方部署。国からの資金提供もあるとはいえ、学会の活動にはかなりのカネがかかる。怪異の焚滅、荒ぶる御霊の鎮魂……どれも世界のために重要なことではあるが、かかるコストは無視できない。ゆえにカネの遣い方と流れる向きを俯瞰し管理する経務部は必要なのだ。
経務部頭『蓮奈 理緒』は大手広告代理店『CK・コーポ』の代表であり、『頭』の中で唯一怪異に対する対応力を持たない。

 

外科魔導部:日本に古くより伝わる神秘体系とは異なる、西洋神秘学を専門とする部署。西洋魔術の技術・知識提供のほか、日本国内の魔術組織の管理を一任されている。
外科魔導部頭の『ミスター・B』は学会と数百年の関わりを持つヨーロッパの巨大魔術組織の幹部でもある。

 

【企夏村の『墓暴き』】

かつて日生・雨月・柏怜の3人が向かった、「墓を暴く霊」が現れると噂される村。
結局3人は『墓暴き』と出会うことはなく、噂は噂と結論付けたが、実のところその村に『墓暴き』は実在していた。
ではなぜ3人は『墓暴き』と出会わなかったのか?理由は、それより前に立教の民俗学者・平野萬斎が教え子と共にこの村に訪れ、そこで『墓暴き』と対決、焚滅したためである。

『墓暴き』は昔、村の因習によって命を落とした巫女の怨みがカタチとなって生まれた怪異であり、魂がそのまま残留した幽霊とは形態が異なる。
平野の推理では、巫女の魂は何らかの外法によって神道神秘理論にはない『生まれ変わり』に成功しており、今もどこかで、よく似た別人として過ごしているㅤㅤㅤとされている。